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税務調査は特定の会社にのみ集中するものではありませんが、対象となりやすいと思われる一定の傾向を見出すことはできます。
一般的にこれからご紹介するような会社は税務調査が入りやすいといわれています。
ちなみに、昔は膨大な申告書の中から、調査対象を選定するのは大変なことで、効果的な選定をするもの調査官の職人芸のようなものだったようです。
しかし、現在ではKSKシステム(国税総合管理システム)という申告書などの情報を一元管理しているシステムがあり、その情報のうち特定の条件に該当するものを検索して選定の際に参考にしています。
① 統計上、不正が行われた確率の高い業種である
過去の統計上不正が行われていた確率の高い業種は、やはり税務調査の対象になりやすいといわれます。構造的に使途のあいまいな支出が行われることのある業種についても同様です。そういった観点で選定対象になりやすい業種としては、パチンコ(遊戯場)業・産業廃棄物処理業・水商売・風俗営業・不動産業・建設業といった業種が挙げられるでしょう。
また、年による流行りのようなものもあるようです。今年はIT関係の業種を対象にするであるとか、富裕層の不動産事業を調べようであるとか、農産物で特に売れ行きのよかったものがあった年にはその農産物の生産農家を重点的に調査しようなどというように、重点調査対象を毎年決めて調査することもあります。
② 前回の調査からの期間が空いている
税務調査があってから次の調査までの間隔は、おおむね3年から5年が一般的だといわれています。これは、税務上の時効が5年(偽りその他不正の行為があった場合には7年)であることに起因しているといわれます。
したがって、税務調査を受けていない期間が長くなってきている場合は調査対象に選定される可能性が高いといえます。
とはいえ、10年以上税務調査を受けていない会社はたくさんありますから、何年で必ず税務調査があるという訳ではないのが事実です。
③ 過去の税務調査で大きな指摘を受けている
過去に税務調査があった際に修正があり、しかも重加算税が課されたといった経緯がある場合には、2年ごとなど間をおかずに税務調査が行われることがあります。
重加算税はいわゆる仮装や隠ぺいによって税額を少なく申告した場合に課される罰金のようなものです。経理ミスなどによる修正の場合に課される過少申告加算税と比べて税率も高くなっています。
また、延滞税の計算にも影響が及びますし、こういった税務調査の頻度という観点でも会社に不利に働きます。
ですから、税務調査による修正の際に重加算税の対象になるか、過少申告加算税の対象になるかということは大きな問題といえるでしょう。
調査官は税務調査で重加算税を課することができると成績になるので、隠ぺいの証拠がしっかりと押さえられていない場合でも、なんとか重加算税の対象にしようとする恐れがあります。
単なるミスや勘違いの場合、修正はやむを得ないですが重加算税の対象にならないように顧問税理士と共にしっかりと反論してください。
④ 前年や同業他社と比べて異常な数値がある
前年や同業他社との比較という観点も選定の重要な要素です。こういった比較は前述したKSKシステムを利用すればたやすくできます。
たとえば、
・売上の急増または急減があった場合
・利益率の急増または急減があった場合
・交際費や雑費の急増または急減があった場合
・特別損益といわれる科目の金額が大きい場合
・新たに支店を出すなど規模拡大をした場合
といった項目などいろいろな切り口から比較がされ調査対象の選定に活かされています。
こういった比較要素の一つ一つには、その背景となる意味が隠されています。たとえば、なぜ売上が急増したら税務調査の対象にされるかということを説明します。
売上が急増すれば一般的に利益も急増します。そうなるとそれだけ税負担も増すので納税者は重税感を感じやすくなります。そこでその納税者には税金を少しでも安くしようという意識が働いて脱税してしまう。税務署はそういう可能性があるという見方をしているのです。
また、なぜ交際費の増減に着目するかというと、交際費は法人では経費になる金額に一定の限度があります。したがって、本来交際費にしなくてはならない支出を雑費などで処理する可能性があるのです。
⑤ 赤字から黒字に転換した直後である
赤字が続くと税金を支払うことも無いことから経理がずさんになってしまいがちです。黒字に転換した直後に調査を受けると、そんな赤字時代の処理が指摘され修正ということになります。
ただし、その修正額がその事業年度の赤字や過去の赤字と相殺できる場合にはその修正した事業年度の税金は出ないということになります。
しかし、それで安心してはいけません。当初は黒字に転換した事業年度で過去の赤字を相殺して税額をゼロないしは少なく申告していたのに、修正があったために相殺できず税額が出たり増加したりしてしまうことがあるのです。
ですから、黒字になった直後というのも税務調査が入りやすいのです。
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