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源泉所得税の税務調査は、通常法人税や所得税の税務調査の時に同時に行われます。
しかし、多くの従業員を抱える会社や報酬の支払いの件数が多いタレント事務所などは、単独で源泉所得税の調査が行われることもあります。
会社や個人事業者は、従業員などに対して支払う給与・報酬の中から所得税を徴収し、徴収した所得税を国に納めなければなりません。この徴収税の仕組みのことを「源泉徴収税度」といいます。会社や個人事業者がこの源泉徴収を怠ると、加算税や延滞税が課されたり、不徴収犯として罰則の対象となる可能性もあります。
税務調査では、毎月の源泉所得税額の計算や年末調整の計算が妥当かどうかについて、給与の基礎資料や扶養控除等申告書をもとに確認されます。また、報酬料金の支払いがある場合には、契約書などで源泉徴収の対象となるかどうか、報酬料金に係る部分の金額を確認し、そのとおりに源泉徴収されているかどうかを確認されます。さらに、非居住者や海外勤務者に対する給与がある場合には、誤りやすい部分ですので、念入りにチェックされることとなります。
通常は、上記のように計算が正しくされているか、扶養控除等申告書は保管されているかという程度の調査ですので、法人税などと同時調査が行われるときは、調査日程の最後に確認される程度です。ただし、不審な人物への支払いや不自然な給与・外注費の支払いがあった場合には、詳細に調査されることになります。
調査で誤りが見つかった場合、税務署は源泉所得税の是正を行います。会社は更正に基づいて源泉所得税を納付し、後で従業員などから徴収することになります。ただし、加算税や延滞税は会社が負担しなければなりません。
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様々な理由で指摘を受けることになりますが、その中でも比較的指摘を受けやすい項目を挙げておきます。以下を参考に自社において該当するものがないかを確認しましょう。
① 通勤手当の課税関係
② 食事代の会社補助
③ 社員旅行
④ 成績優秀者に対する表彰金
⑤ 創業記念日や永年勤続表彰記念品の支給
⑥ 短期アルバイトの源泉徴収
⑦ 扶養控除等申告書の提出漏れ
⑧ 個人に支払うデザイン料や原稿料などに対する源泉徴収
⑨ 海外支店で勤務する役員報酬の源泉徴収
⑩ 給与が一部未払いの場合の源泉徴収
① 通勤手当の課税関係
通勤手当は通常の給与に加算して払うものに限り、非課税となる限度額が定められています。この限度額を超える部分は給与として課税されることになり、源泉徴収が必要となります。
(電車やバスだけを利用して通勤している場合の非課税限度額)
通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額が非課税の限度額となります。ただし、1カ月あたり10万円を超える場合には、10万円となります。
(マイカーや自転車を使って通勤している場合の非課税限度額)
通勤距離が片道2キロメートル以上である人に対して、通勤距離に応じて1カ月あたりの非課税限度額が定められていますので、国税庁のHP等でご確認ください
(マイカー・自転車の他電車・バスも利用して通勤する人の非課税限度額)
利用する交通機関における1カ月あたりの合理的な運賃等の額とマイカー等の距離ごとに定められた非課税限度額の合計が非課税限度額となります。ただし、1カ月あたり10万円を超える場合には、10万円となります。
② 食事代の会社補助
役員や従業員に支給する食事代は、次の2つの要件を満たしていれば給与として課税されません。
①本人が食事代の半分以上を負担していること
②1カ月あたりの会社補助の額が3,500円(税)以下であること
この要件を満たしていないときは、会社補助の全額が給与として課税されることとなり、源泉徴収が必要となります。
現金で食事代の補助をする場合には、深夜勤務者に1食あたり300円(税抜)以下の金額を支給する場合を除き、会社補助の全額が給与として課税されます。なお、残業や宿日直を行う時に支給する食事は、無料で支給しても給与として課税されません。
③ 社員旅行
社員旅行は、不相応に高額なものではなく、旅行期間が4泊5日以内(海外旅行の場合は、外国での滞在日数が4泊5日以内)であり、全体の人数の半数以上が参加(工場や支店ごとに行うときはその職場の半数以上が参加)しているは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいこととなっており、源泉徴収は必要ありません。
④ 成績優秀者に対する表彰金
社内表彰制度などで成績優秀者に対して支払う表彰金も、役員または使用人の通常の職務の範囲内の行為に対する対価であると考えられますので、給与と同じ性質を持つものにあたります。したがって、表彰を受けた人の給与所得として課税しなければなりません。
⑤ 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給
創業記念で支給する記念品や永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品や旅行への招待は、会社一般的に見て相当と認められる範囲のものであれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。具体的には次に揚げる要件を満たす必要があります。
<創業記念などの記念品>
①社会一般的にみて記念品としてふさわしいものであること。
②処分見込価格が税抜きで1万円以下であること。
③一定期間ごとに行う行事の場合は、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること。
<永年勤続者に支給する記念品>
・永年勤続や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。
・勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること。
・同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること
したがって、上記の要件を満たさないものは、記念品を受けた人の給与所得として課税しなければなりません。なお、記念品や旅行への招待に替えて現金や商品券などを支給する場合には、その全額を給与所得として課税しなければなりません。
⑥ 短期アルバイトの源泉徴収
パートやアルバイトに給与を支払う際には、一般の社員と同様に源泉徴収を行う必要があります。この場合の源泉徴収する額は一般の社員と同様に「給与所得の源泉徴収税額表の「月額表」または「日額表」の「甲欄」または「乙欄」を使って計算します。
ただし、パートやアルバイトに対して日給や時間給で支払う給与は、日々雇い入れている場合の当初の2ヶ月間や、あらかじめ雇用契約の期間が2ヶ月以内と決められているときは、「日額表」の「丙欄」を使って計算します。このように、短期アルバイトの場合は、支給形態により適用する税額表が異なります。
⑦ 扶養控除申告書の提出漏れ
従業員から「扶養控除等申告書」の提出がなかった場合、その従業員から源泉徴収する税額は、「給与所得の源泉徴収額表」の「甲欄」の適用は受けられず、税額が高く設定されている「乙欄」を使って計算しなければなりません。
⑧ 個人に支払うデザイン料や原稿料などに対する源泉徴収
個人に対する次の報酬・料金などの支払いをする場合には源泉徴収をしなければなりません。
特にスポットでの支払いは源泉徴収の漏れが生じやすいので、個人に対する支払いが発生した都度、その内容を確認して、源泉徴収の有無を把握しておきましょう。
また、源泉徴収が必要な報酬・料金などに該当するかどうかは、請求書に書かれている内容ではなく、実質的な支払内容によって判断します。たとえば、謝礼、取材費、車賃といった内容で請求書に書かれていても、上記で規定されている報酬・料金などの性質を持つものは、源泉徴収の対象となります。
⑨ 海外支店で勤務する役員報酬の源泉徴収
役員や従業員が海外の支店で常時勤務することとなった場合、所得税法上の非居住者となります。非居住者である従業員に支払う給与については、国内の勤務に基づく給与が国内で支払われる場合に、源泉徴収が必要で、それ以外は必要ありません。
しかし、役員はその扱いが異なります。内国法人の役員としての海外勤務に対する給与には、日本の所得税の課税対象となり、20%の税率で源泉徴収が必要です。ただし、支店長など使用人としての立場で常時海外勤務している場合には、源泉徴収の必要はありません。
⑩ 給与が一部未払いの場合の源泉徴収
役員や従業員に支給する給与等が、支給日に支払われず未払いとなる場合、実際に支払うときまで源泉徴収を行う必要はありません。しかし、役員賞与は支払いの確定した日から1年を経過しても支払われない場合には、その1年経過した日に支払があったものとみなして源泉徴収する必要があります。
給与等の一部を支払い、残額が未払いとなる場合には、支払うべき給与等の金額に対する所得税のうち、実際に支払う給与等の金額に対応する部分の所得税を計算して源泉徴収しなければなりません。
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