個人事業主の税務調査を税理士に相談
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消費税の税務調査が単独で行われることはあまりありません。多くのケースでは、法人税や所得税の税務調査と同時に行われます。法人税や所得税の税務調査に来たときに、消費税に関係する資料を求められたり、消費税の会計処理が正しいかどうかを同時に調査されることになります。
ただし、消費税は赤字会社でも納税しなければなりません。そのため、赤字会社でも消費税の調査が単独で行われる可能性があります。
また、最近は、消費税について虚偽の申告を行って不正に還付を受けるケースが見受けられるため、税務当局も不正還付防止に重点的に取り組んでいるようです。
固定資産等を取得したことにより多額の還付を受けることとなる場合、その還付原因となる事実関係について十分な審査が行われ、場合によっては税務調査が行われることになります。
「消費税は8%でしょ。単純に8%の税理士で計算すればいいんじゃないの?ややこしいことはないんじゃないの?」と思うかもしれません。しかし、実際は結構ややこしいのです。なぜなら、取引の中には非課税になるものや消費税にならないもの(不課税)が含まれているからです。
つまり事業の取引には消費税が、かかっているものとそうでないものがあります、この区分をするのも専門的な知識がひつようなため、税理士に任せずに自分で申告してる場合は税務調査前に一度税理士にチェックしてもらった方がいいでしょう。
参考資料
国税庁発表の消費税の調査件数
調査件数 | 申告漏れ | 調査件数に占める申告漏れ件数の割合 | |
個人 | 95,000件 | 67,000件 | 約70% |
法人 | 138,000件 | 75,000件 | 約50% |
上の表のとおり、申告漏れのあった件数は個人6万7千件、法人7万5千件で、調査件数に対する割合は個人で約70%、法人で約54%と比較的高い数値となっています。やはり、消費税も調査で指摘を受けるケースが多いのが現状です。
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消費税の納税金額を計算する方法には原則課税制度と簡易課税制度の2つの制度があります。どちらの制度を選択しているかによって、税務調査の中身も大きく変わってきます。
特に選択しなかった場合は原則課税になります。
原則課税制度では、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を差し引いた金額を消費税として納税します。売上、仕入れの一つ一つの取引について、消費税が課税されるかどうかを判定し、積み上げて計算しなければなりません。
したがって、一つ一つの取引の消費税が正しく区分されているかどうかが税務調査のポイントになります。
ただし、税務調査では時間的な制約もあるので、すべての取引について、課税非課税の判定があっているかどうかを調査することはできません。そのため、次のような手順で調査が進められるのが一般的です。
① 消費税申告書と決算書などとの整合性チェック
② 帳簿のチェック
③ 請求書、領収書のチェック
1 消費税申告書と決算書などとの整合性チェック
消費税申告書は決算書や会計システムで作成した消費税集計表をもとに作成するため、通常は両社の内容は整合するはずです。整合していないときは、調整を行った内容が正しいものであるかどうかが確認されることになります。
2 帳簿のチェック
売上に係る消費税や仕入に係る消費税の区分に誤りがないかどうかを帳簿を見て確認します。このとき、課税や非課税の区分が混じっている勘定科目を重点的に確認します。福利厚生費、通勤費、交際費、賃借料などがその対象となります。
また、重要な固定資産の取得や売却があれば詳細に確認します。
3 請求書、領収書のチェック
帳簿だけでなく請求書や領収書といった証憑も確認し、取引の事実に基づいて正確に記帳されているかどうかを確認します。
なお、前述のとおり、消費税の調査は通常、法人税等の調査と同時に行われます。そのため、消費税の調査で見つかった修正事項だけでなく、法人税の調査で見つかった修正事項に連動して消費税の修正事項となるものもあります。
たとえば、売上の計上漏れや経費の過大計上などが法人税の調査で見つかった場合は、消費税の修正事項となります。
売上の計上漏れなどで、法人税の重加算税が課された場合、消費税でも重加算税が課される可能性があります。
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様々ありますが、代表的なものは次のとおりです。
① 不動産取引
土地の販売、土地や居住用住宅の賃貸料は非課税取引となり、課税売上に含める必要はありません。ただし、土地や居住用住宅の賃貸期間が1ヵ月未満の場合は課税取引になります。
② 役員報酬・給与
役員報酬や給与は課税対象外となり、消費税を控除できません。
③ 通勤費
従業員に支払う通勤手当のうち通常要する額については課税仕入となり、消費税を控除できます。
④ 旅費交通費
国内出張のための出張旅費・宿泊費・日当については、通常必要であると認められる部分の金額は課税仕入となり、消費税を控除できます。
日当は特に間違えやすいので注意してください。
また、海外出張のための出張旅費・宿泊費・日当は原則として課税仕入にはならず、消費税を控除できません。
⑤ 交際費
祝い金や香典等の現金で支出したものは課税対象外となり、消費税を控除できません。
また、お中元のビール券や商品券は非課税取引となり、消費税を控除できません。旅行券、図書券、食事券、映画館などの入場券、プリペイドカードも同様です。
な、細かい話ですが、ゴルフのプレー料金に含まれるゴルフ場利用税は租税公課のため課税対象外となり、消費税を控除できません。
⑥ 寄付金
寄付金は、対価を得て行われる取引ではないので、課税仕入にはならず、消費税を控除できません。
⑦ 支払報酬
行政書士や司法書士へ払った報酬の中には、各種手続きで必要となった印紙税や登録免許税の立替費用代金が含まれていることがあります。これらの印紙税や登録免許税は租税公課のため課税対象外となり、消費税を控除できません。
⑧ 車両費
車両を取得した際に支払った自動車税は租税公課のため課税対象外となり、消費税を控除できません。
⑨ 支払手数料
クレジットカードで販売したときのカード会社に支払う手数料は金利の性格を持つため、非課税取引となり、消費税を控除できません。
⑩ 諸会費
同業者団体へ支払う会費はその団体から受ける役務の提供などと支払う会費などとの間に明らかに対価関係があるかどうかによって、課税仕入かどうかを判定します。たとえば、セミナー等への参加費は対価性があると認められるため課税仕入となり、消費税を控除できます。
⑪ 減価償却資産・リース資産
建物取得の際の不動産取得税や登録免許税は課税対象外となり、控除できません。
なお、減価償却資産やリース資産を取得したときは、減価償却期間やリース期間ではなく、取得した期に消費税の金額を控除します。
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消費税の納税金額を計算する方法には本則課税制度と簡易課税制度の2つの制度があります。どちらの制度を選択するかによって、税務調査の中身も大きく変わってきます。
簡易課税制度は小規模事業者の消費税事務の負担軽減を図るための制度です。
課税期間の2期前の課税売上高が5,000万円以下で、事前に簡易課税制度の選択手続きをとっている場合に適用を受けることができます。
本則課税制度のように仕入などの一つ一つの取引について消費税の区分を判定する必要はなく、課税売上高に業種ごとに定められたみなし仕入率を乗じて、簡便的に控除する消費税額を決定します。
消費税の簡易課税「みなし仕入れ率」一覧
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | 小売業 | 80% |
第三種事業 | 製造業 | 70% |
第四種事業 | その他の事業 | 60% |
第五種事業 | サービス業 | 50% |
第六種事業 | 不動産業 | 40% |
簡易課税制度では、業種ごとに定められたみなし仕入率が消費税額を大きく左右することとなります。また、複数の事業がある場合は、原則として、事業区分ごとに課税売上高を集計して計算しなければなりません。
そのため、税務調査では、業種ごとに定められたみなし仕入率の適用が正しいかどうかが、最も重点的にチェックされます。
また、簡易課税制度を適用している場合は、仕入れに係る消費税の区分の誤りは問題になりません。課税売上高をもとに消費税額を計算することになるので、課税売上高が正しいかどうかが詳細にチェックされます。
法人税の調査で売上の計上漏れが見つかった場合は、簡易課税制度を適用している場合でも消費税の修正となります。
しかし、仕入れの過大計上が見つかっても消費税の修正とはならないのです。
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仕入に係る消費税を差し引くためには、課税仕入等の事実を記載した帳簿および請求書等の両方を保存する必要があります。
そして、この帳簿・請求書等には、次に掲げる事項が記載されていなければなりません。仮に不備があった場合、消費税の控除を受けることができず、消費税の納付税額が増えてしまうので注意が必要です。
なお、請求書がないといった場合、その支払額が税込3万円以上か否かで、その対処方法が変わってきます。
税込の支払い額が3万円以上であっても請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合には、帳簿にそのやむを得ない理由および相手方の住所または所在地を記載することを条件として、請求書等の保存がなくても控除が認められます。
① 帳簿の記載要件
課税仕入の相手方の氏名および名称
課税仕入を行った年月日
課税仕入に係る資産または役務の内容
課税仕入に係る支払対価の額
② 請求書等の記載要件
書類の作成者の氏名または名称
課税資産の譲渡を行った年月日
課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容
課税資産の譲渡等の対価の額
書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
A 代表的なものをいくつか挙げておきましょう。
① マンションのオーナー節税
これまで、マンションやアパートのオーナーが、課税売上割合を調整して、マンション取得に際して支払った消費税の還付をうけるという節税行為が横行していましたが、平成22年税制改正で一定の制限がかけられました。
売上に係る消費税が仕入に係る消費税を下回るときは、消費税額がマイナスとなり、還付を受けることができます。しかし、還付を受けるためには課税売上割合(売上に占める課税売上の割合)が95%以上である必要があります。
(※正確には課税売上割合が95%未満の場合でも一定の方法により計算された金額を控除することができます)
オーナーがマンション等を取得するとき、多額の消費税を支払うこととなります。その一方で、住宅家賃収入は非課税取引のため課税売上には含めません。そのため、このままでは課税売上割合は0%となり、仕入れ税額控除をおこなうことができません。そこで、住宅家賃収入がまだないときに自動販売機を設け、自販機収入という課税売上を意図的に作ることによって、課税売上割合が95%以上となり、マンション等の取得に際して支払った消費税の還付を受けることができていたのです。
しかし、税改正により平成22年4月1日からこの取扱いが変わりました。
上記のようなケースで課税事業者を選択した場合、その期を含む3年間は課税売上高にかかわらず、免税事業者を選択することができなくなります。
また、簡易課税制度の適用を受けることもできません。この結果、初年度の課税売上割合が高く、2年目・3年目の課税売上割合は低くなります。
3年間の平均課税売上割合が著しく変動した場合は消費税の調整が必要となり、初年度に還付された消費税を返さないといけないことになります。
今後、税務調査でも重点的にチェックされると考えられる事項ですので、留意しましょう。
② 従業員を外注扱いとするケース
従業員に対する給与は消費税の対象外となり、消費税を控除することはできません。
一方で、個人事業主に仕事を外注し外注費を支払った場合は、課税仕入となり消費税を控除することができます。このため、これまで従業員だった者を外注扱いにすることで、消費税を少なくするということも考えられます。
しかし、実態が何も変わらないのに、これまで給与として支払っていたものを外注費に変えても消費税逃れとして税務調査で指摘される可能性があります。
③ 役員に対して定額譲渡をした場
法人が役員に対して資産を贈与したり、時価よりも著しく低い価格で譲渡したときは、時価により譲渡があったものとして消費税が課せられることとなります。この場合の「著しく低い価格」とは、譲渡時点の時価の50%を下回る価格とされています。
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